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イラク日記2006番外編 ジャーナリストの役割
いつからか自己責任論なるものが登場した。
昨日アルビルで出会ったアジアプレスの人も言っていたけど、後で無謀な取材だったと言われないように色々手配をするのが大変だ。でもよく考えてみたら自己責任なんて当たり前なんだと思う。アフガニスタンの時もイラクの時も僕は伝えたい事があって取材を敢行した。もし、僕の身に何か不測の事態が起きたとしても、それは勿論僕の責任だし、誰かに責任を取ってもらうことなんてできない。でも何故か自己責任と言うのが無謀な行動をした人に対する非国民論になってしまったようだ。
僕たちジャーナリスト、特にフリーで活動している人たちはみんな貧乏だ。自腹で取材をして、結果どこにも発表できないことも多い。何故、みんなそこまでして動くのか。それはジャーナリストそれぞれが伝えたいことがあるからだと思う。
戦争中のイラクはまだ報道的な価値があったから良かったかもしれない。でも戦後3年を迎える今となっては報道的な価値はかなり低いと言わざるを得ない。実際、イラクで自衛隊がその活動を終え、撤退を始めたというのに日本のマスコミは全然サマワに向かわない。自衛隊の先遣隊がサマワに着いた時の過熱報道はなんだったんだろうと思う。
ジャーナリストの役割は伝えること。伝える為に多少の危険があっても、伝えたい気持ちが大きければそこに赴くのがジャーナリストだ。
確かに今のイラクは考えられないくらい危険度が高いと思う。僕に限らずイラクに入るジャーナリストは多かれ少なかれ覚悟を決めて行く筈だ。赤字になる確率が高い、危険度もとても高い。そんな中、現地に赴く僕たちに自己責任なんて言って欲しくないな。
諸外国は危険を承知でイラクの報道を続けている。今回のイラク戦争にこれほど関わった日本が報道を閉ざしてしまっていいのだろうか。
僕だって怖い。怖いからイラクに行くのを延び延びにしてきた。
でももう限界。できるだけ伝える為に現地に向かう。
イラクで国民議会選挙始まる(2005年1月)
髭を剃る。
日本で伸ばしていた髭を剃った。ある面僕にとっての敗北宣言だ。
僕は普段日本では絶対に髭を伸ばさない。カメラマンは髭を伸ばす人が多いが、僕はどうもいやだ。僕の先輩カメラマンは「髭をはやしてギャラが上がった」と言っていた。確かにありそうな話だ。
2週間ほど前から髭を伸ばし始めた。それはイラクに行くことになりそうだったから。どうあがいても僕は日本人に見えるだろうが、せめて日本にいるうちから髭くらい伸ばしておこうと思った。
多くのジャーナリストがイラクを目指したが、結局イラク戦争を体験したジャーナリストは一人も選挙に間に合わなかった。
僕には秘策があった。誰もビザを取得することができないでいる中、僕はなんとか取得できると思っていた。
それはアジアニュースのスタッフ石井さんがイラク大使を取材し、僕もおこぼれで、大使の公邸に招かれ食事をご馳走になっていた。
大使は気さくな人で、イラク人がよく言う「ここはお前の家だと思っていつでも食事をしに来なさい」と言ってくれた。
大使はもとNASAにいた人で、宇宙物理学を専攻していた僕とは話しがあった。そんな大使のバックアップがあればビザは大丈夫と思い、石井さんを通じてビザをお願いしていた。何とか取れそうな雰囲気だったのに、最終的には選挙に間に合わなかった。
大使的にはビザを出してもいいという感じだったようだが、一つ言われたのは「ビザの取得を望む人は日本の外務省に報告をしなければならない」ということ。簡単に言うと、イラク側がビザを出してもいいと判断しても、外務省は出してくれるな!とイラク側にお願いするということだろう。
お願い、と言うのはお願いである。出すな!とは命令できないはずだから。イラクを目指した人たちには外務省から電話が入り、行かないようにしてください。との説得があったようだ。アジアニュースのオフィスにも久保田宛に電話があったようだが、僕は外出中ででなかった。
さて、問題なのはどうして外務省がビザを出してくれるな!と言うかだ。思い出して頂きたいのは何度も日本政府が繰り返して言う言葉。
「イラクは非戦闘地域です」。非戦闘地域であるが故に自衛隊の任期も延長されたはず。でも外務省としては危険だから渡航を自粛してほしいと。確かにテレビを見る限り、とても危険だと感じる。実際、僕の友人のイラク人も「お願いだから今はイラクに来ないでくれ、僕は友人を失いたくない」とメールしてきた
くらいだ。僕も正直怖かった。行きたいような、行きたくないような。でも僕たちは観光でイラクを訪れる訳ではない。かっこ良く言えば報道という使命のため。危険だから報道はやめてしまうというのは違う気がする。特に今回のイラク戦争は日本も密接な関係がある。報道の義務があると思う。日本人よりもっと危険度が高いイギリスやアメリカでさえイラクに特派員を派遣して報道を続けている。自衛隊の活動もほとんどテレビに出てこない。賛否両論はあっても実際自衛隊がどのように活動しているのかは報道されるべきだと思う。
テレビでは「イラクで初めての民主的な選挙が行われようとしています」と何度も言っているが、選挙を前に国境が閉鎖され、投票所が何度も襲撃される状態の選挙がはたして民主的と言えるのだろうか?イラクの選挙をテレビで見る僕。命の危険性は無いが、何か大きな忘れ物をしたようで落ち着かない。イラクの一般市民(特に貧しい人たち)が何を望んでいるのか。今回の選挙に対してどう思っているのか、誰か報道してください。
そうだ、唯一NHKがバグダッドにいる。最近何かと悪い事件で有名になっているNHKさん、今こそ力の見せ所ですよ。
イラク人質関連
イラク人質関連
虫の知らせというのがあるのだろうか?低血圧で朝が弱い僕が6時50分に目覚めた。折角だから朝のニュースを見ようと思い、テレビをつけると、イラクで日本人が人質に取られたというニュースが流れていた。な!なんと、・・僕は一気に目が覚めてしまった。その後すぐに新聞各社から問い合わせの電話が入ってきた。どの新聞社も僕に聞くことは同じで、捕まった男性を知っているか?という質問ばかりだった。唯一、朝日新聞の名古屋支社が僕のインタビューを記事にしてくれた。本当ならば、今回また起きてしまった人質事件に関して、あちこちで僕の意見を述べたい所だが、残念ながらテレビに出番があるのは政治学者さん達のようで・・。いつもホームページの更新をさぼっている僕としてはこんな時くらい頑張らなければと思い、キーを叩いている。今回の事件に関して日本政府がは「救出には全力をすくす」というコメントをした。しかし同時に「自衛隊の撤退はない」と明言してしまった。これはイラクの武装勢力に対して「日本政府は要求をのまないから人質を殺してもいい」と言っているようなものだと思う。人質の生命を尊重するならば、自衛隊の事は言及せずに、48時間の期限ぎりぎりまで交渉をすべきだ。前回の人質事件でも政府は水面下で沢山の交渉をしたそうだから・・。今回の政府の発言は、人質の人命よりも対米追従の政策を維持することが大切だという判断のもとに行われた発言だと思う。人質事件の発生は自衛隊のイラクでの活動がイラクの人々に理解されていない証拠だと思う。日本では殆ど報道されていないが自衛隊がメインでやっている給水支援は水自体は自衛隊が作っているものの、実際に給水に行くのは雇われたイラク人が行っている。今年の三月にイラクを訪れた時もイラク人が「お前の国の自衛隊はやっぱり占領軍だったのか、基地ばかり大きくなっているぞ」と言われ、「そんなことないよ、給水支援とかやってるよ」と答えると、「そんあ姿見たこと無い」。と言われてしまった。実際に日本の自衛隊がやってくれたと思っている人は殆どいない。折角の活動がイラク人に評価されていない様子だった。つい最近も自衛隊の宿営地にロケット弾が打ち込まれたように、現地での反日感情は高まってきている。残念なのは、現地での自衛隊の活動が全然報道されていないことだ。ちゃんと報道して日本人が感心をもてば、もっと理解してもらえる活動にしようよ!という前向きな意見もでてくると思う。もう一つ反日感情も高まってきているという事実も報道されていなかった。人質事件がおこってからイラクの現状に目を向けるのでは遅いと思うし、前回も人質事件が起こったときだけイラクのニュースが流れ、すぐに消えていってしまった。今回の事件は今まで以上に楽観視できないと思う。犯行グループは要求が通らないときには人質を平気で殺してきたグループだから。犯行グループの活動は決して許せるものではない。しかし、イラクの人々の中に外国の軍隊は撤退してもらいたい。という気持ちがあるのも事実だ。よくテロ事件と言われるが、テロという言葉だけではかたづけられないと思う。前回は自己責任と言う言葉で片付けられてしまった。それは幸いにも人質が無事に解放されたからだと思う。最悪のケースになった場合、今度は政府責任が問われるのではないだろうか。
自衛隊の給水活動。
自衛隊の宿営地内で作った水をパイプで外に運びだし、給水車両に乗せ給水に向かう。
バルブをひねっている人の後ろが自衛隊の宿営地。セキュリティー上の問題があるの で、後ろの鉄条網が写らないように写真を撮ってくれ。と言われた。
構図を考えると不可能だったので、モザイクを入れさせてもらった。
サマワって非戦闘地域ですよねー。と僕が言ったとき、自衛隊の人は「勘弁してくだ さいよー。非戦等地域なんて言っているのは政府の人間だけですよー」と言われた。
もっともだと思う。その後も宿営地に対する攻撃は後を絶たない。
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